投資の促進及び保護に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定

日本国政府及びロシア連邦政府(以下「両締約国」という。)は、両国間の経済的協力を強化すること希望し、投資及び投資に関連する事業活動についての待遇を良好なものとすること並びに投資財産の保護を図ることを通じて、それぞれの国の投資家による他方の国の領域内のおける投資のための良好な条件を作り出すことを意図し、投資の促進及び保護が両国間の資本及び技術の交流を促すこととなることを認識して、次のとおり協定した。

第一条

この協定の適用上、

  • (1)「投資財産」とは、次のものを含むすべての種類の資産をいう。
    • (a)動産及び不動産に関する権利
    • (b)株式及びその他の形態の会社の持分
    • (c)金銭債権又は金銭的価値を有する契約に基づく給付の請求権であって、投資に関連するもの
    • (d)特許、商標、意匠、集積回路の回路配置、営業用の名称、原産地表示又は原産地名称及び開示されていない情報を含む知的所有権
    • (e)天然資源の探査及び採掘のための権利を含む特許に基づく権利

投資された資産の形態の変更は、投資財産としての性質に影響を及ぼさない。

  • (2)「収益」とは、投資財産から生ずる価値、特に、利益、利子、資本利得、配当、使用料及び手数料をいう。
  • (3)「会社」とは、有限責任のものであるかないか、法人格を有するものであるかないか、また、金銭的利益を目的とするものであるかないかを問わず、社団法人、組合、会社及び団体をいう。

一方の締約国の関係法令に基づいて設立され、かつ、当該一方の締約国の領域内に住所を有する会社は、当該一方の締約国の会社と認められる。

  • (4)「投資家」とは、次のものをいう。
    • (a)日本国に関しては日本国の国民、ロシア連邦に関してはロシア連邦の国民である自然人
    • (b)(3)に定義された会社
  • (5)「投資に関連する事業活動」には、次のものを含む。
    • (a)支店、代理店、事務所、工場その他の事業活動の遂行のための適当な施設の維持
    • (b)投資家にとり設立され又は取得された会社の支配及び経営
    • (c)会計士等の技術者、高級職員、弁護士、代理を業とする者その他の専門家の雇用
    • (d)契約の締結及び履行
    • (e)投資財産及び収益の使用、享受又は処分で事業活動の遂行に関連するもの

第二条

  • 1 各締約国は、関係法令に従ってその権限を行使する権利を留保の上、他方の締約国の投資家による投資が自国の領域内において行われるための良好な条件を醸成し、及びこれらの投資を許可する。
  • 2 いずれの一方の締約国の投資家も、他方の締約国の領域内において、投資の許可及び投資の許可に関連する事項に関し、第三国の投資家に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

第三条

  • 1 いずれの一方の締約国の投資家も、他方の締約国の領域内において、投資財産、収益及び投資に関連する事業活動に関し、第三国の投資家に与えられる待遇より不利でない待遇を与えられる。
  • 2 いずれの一方の締約国の投資家も、他方の締約国の領域内において、投資財産、収益及び投資に関連する事業活動に関し、当該他方の締約国の投資家に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。
  • 3 各締約国の投資家の投資財産及び収益は、他方の締約国の領域内において、常に公正かつ衡平な待遇を与えられ、並びに不断の保護及び保障を享受する。いずれの締約国も、自国の領域内において、不当な又は差別的な措置により、他方の締約国の投資家の投資に関連する事業活動をいかなる意味においても阻害してはならない。各締約国は、他方の締約国の投資家が行なう投資に関して義務を負うこととなった場合には、当該義務を遵守する。

第四条

いずれの一方の締約国の投資家も、他方の締約国の領域内において、自己の権利の行使及び擁護のためすべての審級にわたり裁判所の裁判を受け及び行政機関に対して申立てをする権利に関し、当該他方の締約国又は第三国の投資家に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

第五条

  • 1 いずれの一方の締約国の投資家の投資財産及び収益も、他方の締約国の領域内において、公共のため、かつ、正当な法の手続に従ってとられるものであり、差別的なものでなく、また、迅速、適当かつ実効的な補償を伴うものである場合を除き、収用若しくは国有化又はこれらと同等の効果を有するその他の措置の対象としてはならない。
  • 2 1にいう補償は、収用若しくは国有化又はこれらと同等の効果を有するその他の措置が公表された時とそれらの措置がとられた時とのいずれか早い方の時における投資財産及び収益の通常の市場価格に相当する価額(最終的にとられることとなった措置が見通されたことによる当該市場価格の減少分を差し引かないものとする。)のものでなければならない。当該補償は、遅滞なく支払わなければならず、かつ、支払の時までの期間を考慮した妥当な利子を付したものでなければならない。当該補償は、実際に換価をすることのできるものでなければならず、並びにその交換及び移転は、自由でなければならない。当該補償は、収用若しくは国有化又はこれらと同等の効果を有するその他の措置がとられた日に直ちに支払われたとしたならば投資家が置かれたであろう状況より不利でない状況に当該投資家を置くような態様で、支払われなければならない。
  • 3 いずれの一方の締約国の投資家も、他方の締約国の領域内において、1及び2に規定する事項に関し、当該他方の締約国又は第三国の投資家に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

第六条

いずれか一方の締約国の投資家であって、他方の締約国の領域内において、敵対行為の発生又は革命、反乱、暴動、騒乱等の国家緊急事態により投資財産、収益又は投資に関連する事業活動に関して損害を被ったものは、当該他方の締約国によってとられる原状回復、補償、他の補償的措置等のいかなる措置に関しても、当該他方の締約国又は第三国の投資家に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。この条の規定に基づいて何らかの支払が行われる場合には、当該支払は、実際に換価をするこのときるものでなければならず、並びにその交換及び移転は、自由でなければならない。

第七条

いずれか一方の締約国又はその指定する機関が、当該一方の締約国の投資家に対し、他方の締約国の領域内にある投資財産及び収益に関して、当該一方の締約国の関係法令に従って引き受けた損害のてん補に係る契約、保証契約又は保険契約に基づいて支払を行う場合には、当該他方の締約国は、当該支払の原因となった投資財産及び収益に対する当該投資家の権利又は請求権の当該一方の締約国又はその指定する機関への移転並びに当該投資家の請求権又は訴権についての当該一方の締約国又はその指定する機関による代位で当該移転に関連して生ずるものを承認する。権利又は請求権の移転に基づき行われる当該一方の締約国又はその指定する機関に対する支払及び支払われる資金の移転については、第五条、前条及び次条の規定を準用する。

第八条

  • 1 いずれの一方の締約国の投資家も、他方の締約国により、両締約国の領域の間及び当該他方の締約国の領域と第三国の領域との間において自己の行う投資に関連する移転を行う自由を保証される。その移転には、次のものの移転を含む。
    • (1)当初の資本及び投資財産を維持し又は増大させるための追加の価値
    • (2)収益
    • (3)貸付の返済のための資金
    • (4)投資財産の全部又は一部の清算によって得られる収入
    • (5)第五条の規定に従って支払われる補償
    • (6)第六条の規定に従って行われる支払
    • (7)当該投資に関連して当該他方の締約国の領域内において就労する権利を有する当該一方の締約国の国民が受領した賃金その他の報酬
  • 2 各締約国は、移転が、遅滞なく、交換可能な通貨により、移転される通貨の直接取引きの市場における為替相場(当該移転の日のもの)によって行われることを妨げてはならない。
  • 3 1の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、例外的な金融状況又は経済状況においては、自国の法令に従い、かつ、国際通貨基金協定の当事国である限り同協定に従って、為替制限を課することができる。
  • 4 いずれの一方の締約国の投資家も、他方の締約国の領域内において、1から3までに規定する事項に関し、当該他方の締約国又は第三国の投資家に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

第九条

この協定は、いずれか一方の締約国の投資家の投資財産及び収益であって、この協定の効力発生前千九百五十八年五月九日以後に他方の締約国の領域内において当該他方の締約国の関係法令に従って取得されたものについても、適用する。

第十条

この協定のいかなる規定も、投資財産、収益又は投資と関連する事業活動についてこの協定が与える待遇よりも有利な待遇を与える次のものに影響を及ぼすものと解してはならない。

  • (a)いずれか一方の締約国の法令、行政上の慣行若しくは手続又は行政若しくは司法上の決定
  • (b)両締約国間において効力を有する国際協定に基づく義務
  • (c)いずれか一方の締約国の投資家が行う投資に関して他方の締約国が義務を負うこととなった場合には、当該義務

第十一条

  • 1 いずれか一方の締約国と他方の締約国の投資家との間の紛争であって、当該他方の締約国の投資家による当該一方の締約国の領域内における投資に関するものは、可能な限り、紛争の当事者間の友好的な交渉により解決される。この1の規定は、当該他方の締約国の投資家が当該一方の締約国の領域内において行政的又は司法的解決を求めることができることを妨げるものと解してはならない。
  • 2 いずれか一方の締約国の投資家が行う投資から生ずる法律上の紛争が友好的な交渉により解決されない場合には、当該紛争は、当該一方の締約国の投資家の要請に基づき次のいずれかに付託される。
    • (1)千九百六十五年三月十八日にワシントンで作成された国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約(以下「ワシントン条約」という。)が両締約国間において効力を有する場合には、同条約の規定による調停又は仲裁
    • (2)ワシントン条約が両締約国間において効力を有しない場合には、投資紛争解決国際センターに係る追加的な制度についての規則に基づく調停又は仲裁
    • (3)国際連合国際商取引法委員会の仲裁規則に基づく仲裁
  • 3 仲裁の決定は、最終的なものとし、かつ、紛争の当事者を拘束する。この決定は、その執行が求められている領域の属する国で適用されている仲裁の決定の執行に関する法令に従って執行される。
  • 4 いずれか一方の締約国の投資家は、自己の行う投資から生ずる紛争に関し他方の締約国領域内において行政的若しくは司法的解決を求めており若しくは当該紛争に関し適用可能な紛争解決の手続で事前に合意されたものに従った仲裁の決定を求めている場合又は当該紛争に関する最終的な司法的解決がなされている場合には、当該紛争をこの条に規定する仲裁に付託することができない。
  • 5 いずれか一方の締約国の会社が行う投資から法律上の紛争が生ずる場合において、当該一方の締約国の会社が当該一方の締約国に対して当該紛争を仲裁に付託することを要請し、かつ、その要請の日に当該一方の締約国の会社が他方の締約国の投資家により支配されているときには、当該一方の締約国の会社は、この条の規定の適用上、他方の締約国の会社として取り扱う。

第十二条

  • 1 いずれか一方の締約国の投資家が実質的な利益を有する会社は、他方の締約国の領域内において、当該会社が第三国の会社であり、かつ、当該他方の締約国と当該第三国との間の国際協定で投資の促進及び保護に関するものが当該第三国の会社に適用される場合を除き、次の待遇を与えられる。
    • (1)第二条2に定める事項に関し、第三国の投資家が実質的な利益を有する同様の会社が与えられる待遇よりも不利でない待遇
    • (2)第三条、第五条1及び2、第六条並びに第九条に定める事項に関し、当該他方の締約国の投資家又は第三国の投資家が実質的な利益を有する同様の会社が与えられる待遇よりも不利でない待遇
  • 2 1にいう「実質的な利益」とは、会社を支配し、又はこれに決定的な影響力を及ぼすことのできるような程度の利益をいう。いずれか一方の締約国の投資家が有する利益が実質的な利益に当たるか当たらないかは、個々の場合において両締約国間の協議によって決定される。

第十三条

各締約国は、この協定に運用に影響を及ぼす問題に関して他方の締約国の行う申入れに対し好意的な考慮を払うものとし、また、当該申入れに関する協議のための適当な機会を与える。

第十四条

いずれの一方の締約国も、投資を行うこと及び投資に関連する事業活動を行うことを目的として自国の領域に入国し及び滞在する希望を有する他方の締約国の国民の入国、滞在及び住居に係る申請に対し、自国の関係法令に従い、好意的な考慮を払う。

第十五条

各締約国は、投資に関連し又は影響を及ぼすすべての法令、行政上の手続及び司法上の決定を通常の形態で公表する。この条の規定は、いずれか一方の締約国に対し、その開示が法令の実施を妨げる等公共の利益に反することとなり又は私生活若しくは正当な商業上の利益を侵害することとなる秘密の情報を開示することを義務付けるものと解してはならない。

第十六条

いずれの締約国も、その領域内において現地調達についての要求、輸出制限又は輸出入の均衡についての要求に該当する貿易に関連する投資措置をとってはならない。第一文の規定にかかわらず、いずれの締約国もこの協定の署名の日にいずれかの締約国が当事国となっている貿易に関連する投資措置についての多数国間協定と適合する措置をとることができる。

第十七条

  • 1 この協定は、この協定の効力発生に必要な国内法上の手続が完了した旨を通告する外交上の公文の交換の日の後三十日目の日に効力を生ずる。この協定は、十年の期間効力を有するものとし、その後は、2に定めるところに従って終了する時まで引き続き効力を有する。
  • 2 いずれの一方の締約国も、一年前に他方の締約国に対して書面により予告を与えることにより、最初の十年の期間の終わりに又はその後いつでもこの協定を終了させることができる。
  • 3 この協定の終了の日の前に取得された投資財産及び収益に関しては、前各条の規定は、この協定の終了の日から更に十五年の期間引き続き効力を有する。

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。

千九百九十八年十一月十三日にモスクワで、ひとしく正文である日本語、ロシア語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

 日本国政府のために
 都甲岳洋

 ロシア連邦政府のために
 A・シャポヴァリヤンツ

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